内観

はじめに

古代から人々はペストやコレラ、天然痘、麻疹(はしか)、結核などの感染症の流行に対してなす術がなく、感染症は多くの人の生命に関わる病気として恐れられてきました。その後20世紀に入って抗菌薬が開発されてからは、感染症は近い将来克服されるなどとも言われてきました。しかし抗菌薬に耐性のある細菌の出現、その耐性菌やインフルエンザなどの様々な感染症の院内感染、更にはSARSや2009年の新型インフルエンザ等の新たな感染症(新興感染症)の出現と世界的な流行など、21世紀に入って感染症は新しい局面を迎えつつあります。感染対策チーム(Infection Control Team:ICT)は、医療感染関連感染の制御を目的として誕生し、今では殆どの病院等の医療施設に設置されています。

済生会中津病院 感染対策チーム(ICT)は2012年4月に正式に発足し、現在は少人数の実働性の高い専門家チームとして、感染管理に関する知識や資格を有する、医師・看護師・薬剤師・臨床検査技師など約20名で構成されています。

加えて当院では、2016年4月より薬剤耐性菌の発生と蔓延の防止を目的とした抗菌薬適正使用支援チーム(Antimicrobial Stewardship Team:AST)を立ち上げ、活動を行っています。

医療関連感染の防止を目的とした情報の収集、データの分析および職員への啓発、また医療関連感染発生時には拡大防止のためより迅速に制圧に向けた活動を行うことを使命とし、日々活動しています。

感染管理における組織図

ICT・ASTは院内の感染管理における最高決定機関である感染対策委員会の下部組織として位置づけられます。

組織図

院内感染対策に関する取り組み

院内感染対策に関する取り組みについて

ICTの活動内容

ICTは毎月1回会議を行い、院内の感染対策についての検討を行っています。毎週水曜の午後2時からは各病棟を対象としたICTラウンドを行っており、そこでは耐性菌の検出された患者さんや感染症に関する相談のあった患者さんの感染対策や抗菌薬治療の妥当性などについて多職種で協議が行われます。

医療関連感染サーベイランス(※1)に関しては、ターゲットサーベイランス(※2)として耐性菌・手術部位感染・血流感染・人工呼吸器関連肺炎などの感染に関するデータ収集を行っています。またプロセスサーベイランス(※3)として手指消毒薬の使用量調査や手指衛生タイミング調査も実施しています。

入院患者さんに感染の拡大が懸念される感染症が存在するかまたは新たに発生した場合、また院内で周囲への感染伝播が確認された場合は、感染拡大防止向けて可及的速やかに対策の指示を行います。

職員に対しては感染管理に関する相談の窓口となり、さらに感染管理教育も企画・開催しています。
毎月ICTニュースを発行し、感染に関する情報の普及・啓発に努めています。

※1医療関連感染サーベイランス
感染管理に関わる対策の立案や導入・評価に不可欠な医療関連感染に関するデータを、継続的、系統的に収集・分析・解釈し、その結果を改善すべく直接対策に関わる者に還元すること。

※2ターゲットサーベイランス
特定の医療器具や処置による特定の身体部位を対象にしたサーベイランス。

※3プロセスサーベイランス
感染の発生率を減らす過程で行われる様々な対策の実施状況のサーベイランス。

ASTの活動内容

抗菌薬使用の適正化を図ることによる薬剤耐性菌発生の防止、副作用の低減、治療効果の向上の実現を目的としています。現在行われている感染症の治療に迅速に対応する為に、毎週ASTカンファレンスを開催し、抗菌薬使用の妥当性について検討を行っています。

また、コンサルテーション体制を整え、治療を行っている医師などからの診療相談にも対応しています。
さらに今後は、病院内及び地域の医療機関と連携し、定期的な勉強会を開催し、抗菌薬適正使用に向けた啓蒙活動に取り組んでいきたいと考えております。

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