感染症と予防接種について

はじめに

 医療機関は様々な感染症に感染している人や発症している人が一般社会よりも多く集まるところです。また、通院している人も、入院している人も、一般の健常な成人と比較すると免疫力が低い人が珍しくありません。また、この中津病院が所属している済生会中津医療センターは、ご高齢の方々や乳幼児、小児を対象とした複数の入所施設(福祉施設)があり、残念ながら年間を通して様々な感染症の集団発生がみられています。従って常に様々な感染症に対する注意と対策を行い続ける必要があり、怠ると患者さんや入所している方々を感染症から守ることなどできません。感染症対策には感染経路別に行うべき対策の他に、予防接種による対策があります。予防接種で防ぐことのできる感染症(ワクチン予防可能疾患)は感染力が強く、大きな流行を引き起こしたり、発症者が重症化したり、あるいは一旦感染すると治癒するまでに長い期間を要するもの等があり、予め予防接種で感染と発症を防いでおくべきです。
 本コーナーは、当院の関係者はもとより、少しでも多くの方々に感染症に対する興味を持っていただき、また感染症に関する正確な知識・情報を共有していただくために解説されました。以下に感染症と予防接種について簡単に解説し、次いで各論ワクチン予防可能疾患とそれ以外の感染症に分類しながらそれぞれの感染症に関する説明を掲載していく予定です。

感染とは?感染症とは?

 「感染」とは人に対して病原性をもったウイルスや細菌、真菌等の「病原微生物(病原体ともいいます)」が人の体内に侵入して「増殖」した状態を指します。「病原微生物」が人の体内に侵入しただけで、増えなければ「感染」ではありません。

 では次に「感染症」についての記述です。「感染症」とは、「病原微生物」が人の体内に侵入して「増殖」し、それによって人に有害な影響を及ぼすかまたは人の生体の防御反応が起り、人に対して好ましくない反応が引き起こされた状態、すなわち「発症」した状態を指します。すなわち「感染症」は、「病原微生物」に「感染」し、その上で「発症」した状態を意味します。

 以上のことから明らかなように、「感染」=「感染症」ではありません。インフルエンザウイルスやノロウイルス、RSウイルスなどの病原微生物が人の体内に侵入・増殖し、「感染」した場合、全員が発症し、「感染症」を引き起こすものではありません。中には全く症状を示さない「不顕性感染」者も存在しますし、インフルエンザなどでは高熱をきたさない、いわゆる一般的にいうところの感冒様症状で終わってしまい、インフルエンザに罹患したとは周囲も、本人も思わない「軽症例」も少なくありません。病院や入所あるいは通所の福祉施設では、医師、看護師、PTやST等のリハビリテーションスタッフ、保育士、介護士等のスタッフに患者や入所・通所者由来の病原微生物が感染する可能性が高く、例え感染しても患者や入所・通所者ほど発症する確率は高くはないために自分が感染しているとは気付いていない場合が多いと推察されます。このことを正しく理解した上で「感染対策」を実施していく必要があります。

 

 

参照

(1)国立感染症研究所ホームページ:

http://www.nih.go.jp/niid/ja/from-idsc.html

(2)保育所における感染症対策ガイドライン(2012年改訂版):

http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/kodomo_kosodate/hoiku/index.html

(3)学校における感染症対策について.初等教育資料;2013年8月号(No. 903)

感染症の現状について

 かつて人類にとって大きな脅威であった感染症は、病原微生物の発見、検査・診断方法の進歩、ワクチンや抗菌薬の開発と普及、栄養状態や衛生環境の改善、医療の発展などによって、あたかも人類がコントロール可能であるかのような誤った認識が広がり、感染症に対する備えが一時的におろそかになってしまった感があります。

 しかし、1980年代以降からのAIDS(HIV感染症)、エボラ出血熱、狂牛病、腸管出血性大腸菌感染症、そして21世紀に入ってからは重症急性呼吸器症候群(SARS)、鳥インフルエンザA/H5N1、2009年の新型インフルエンザA(H1N1)2009、更に2012年から2013年にかけては重症熱性血小板減少症候群(SFTS)、アラビア半島を中心とした中東呼吸器症候群(MERS)、そしてジカウイルス病等々、これまで存在しなかった感染症(新興感染症)が次々に現れてきています。グローバル化の時代となり、たった1日でこれらの感染症が世界中に広がることも可能となりました。

 さらに、毎年冬に大きな流行となる季節性のインフルエンザは短期間の間に国民の10%前後が感染して発病します。ノロウイルスによる胃腸炎は日本で毎年数百万人の人が罹患しています。もちろんそれ以外にも様々な感染症が常に流行を繰り返しています。感染症は現在でも国民の生活に直接関わることが多いですし、また感染症に関する情報は広く国民的関心が高いことはこれからも変わりはないと思われます。

 そして、人類にとって抗菌薬は、感染症と闘う上において大きな武器となってきましたが、ペニシリンを発見したフレミングが指摘した通り、抗菌薬をはじめとする抗微生物薬への薬剤耐性(Antimicrobial Resistance:AMR)の問題は、今や医療機関内だけではなく市中感染として日本国内はおろか世界中に感染拡大していて、公衆衛生および社会経済的に重大な影響を与えています。2015年5月にWHOはAMRに対するグローバル行動計画を採択し、日本はこれを受けて2016年4月に「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン」(AMRに対する国家行動計画)を公表し、今後5年間で実施すべき5つの目標を掲げました。AMRへの対策は国をあげて強化されていくと思われますし、済生会中津病院としても、先進的な医療を実践している医療機関として、AMRを感染対策の中での最重要課題と位置付けて取り組んでいきます。

予防接種とは?ワクチンとは?

 予防接種とは、各種の病原体に対する免疫を持たない感受性者あるいは免疫の増強効果(ブースター効果)を目的とする者を対象に行われるもので、感染予防、発病予防、重症化予防、感染症の蔓延予防などを目的としています。予防接種法に基づいて国が接種を勧奨し、市町村長が政令で定められた年齢枠内の者に対して主体的に実施する予防接種を定期予防接種と呼びます。一方、予防接種法に定められていない予防接種や、定期接種の年齢枠からはずれて接種する予防接種は任意接種と呼ばれています。任意の予防接種は行政が勧奨しているものではないが、使用するワクチンは厚生労働省によって薬事法上の製造販売承認がなされています。日本国内における定期接種、任意接種の種類と接種のスケジュールについては国立感染症研究所のホームページ(http://www.nih.go.jp/niid/ja/vaccine-j/2525-v-schedule.html)を参照して下さい。

 ワクチンとは、予防接種に使用される薬剤のことであり、生ワクチンと不活化ワクチンに大別されています。組織培養で継代することによって弱毒化した(病原性を非常に弱くした)ウイルスや細菌などの病原微生物を生きたまま接種するワクチンが生ワクチンです。一方、不活化ワクチンには病原微生物をホルマリン等で不活化したワクチンと、病原微生物が生成する毒素を不活化したトキソイドワクチンがありましたが、近年では精製抗原ワクチン、コンポーネントワクチン、遺伝子組み換え型ワクチンといった新しいタイプの不活化ワクチンも開発され、使用されています。

 

参照

(1)国立感染症研究所ホームページ:
http://www.nih.go.jp/niid/ja/from-idsc.html

(2)感染症・予防接種ナビ:
http://kansensho.jp/pc/

(3)予防接種の目的と最近の感染症流行について.調剤と情報;2013年10月号

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