小児科、免疫・アレルギーセンター部長 末廣 豊
気管支喘息についての最近の考え方
以前は気管支喘息の本態は気管支平滑筋の収縮が主体で、治療はこの収縮を弛緩する気管支拡張剤が大切だと考えられていました。ところが最近はそうではなくて、アレルギーの炎症のために起こる血管透過性亢進、アレルギー炎症細胞の浸潤、気管支壁の浮腫、気道分泌物の増加、それらの結果起こってくる気道過敏性が気管支喘息の本態だと考えられるようになりました。これらはその多くが成人の気管支肺胞洗浄液や生検のデータに基づくものでしたが、最近小児でもアレルギー炎症や、気道過敏性、気道のリモデリングという現象が証明されており、アレルギー炎症をおさえる治療の重要性が強調されています。
気管支喘息の予防的治療
ここでは、急性発作の治療ではなくて、発作を予防するためにふだんからしておく予防的薬物治療について述べます。平滑筋の収縮を改善させる気管支拡張剤よりも、アレルギー炎症をおさえる抗炎症治療がより大切ということになります。気管支拡張剤(β刺激剤)の増加・頻回使用は、むしろ、抗炎症治療が不十分な証拠ということになります。
1)β刺激剤
on demand(発作時使用) が原則。発作時には我慢する必要は全くありませんが、連用は、かえって気道過敏性を悪化させます。
連用が必要になると言うことは、抗炎症治療が足りていないことに他なりません。長時間作動型として、貼付剤(ツロブテロール)が使用可能ですが、これはアイデア商品で、寝る前に貼っておくと、早朝のモーニングディップを予防できます。短時間作動型と異なり、長期使用しても気道過敏性を悪化させないと考えられています。
2)抗アレルギー剤
I. DSCG(インタール)
軽症では有効です。運動誘発性喘息では、
運動15〜20分前に吸入すれば予防できます。
II.ロイコトルエン拮抗薬
ロイコトルエン受容体遺伝子多型が測定で
きるようになれば、必ず効く人(70%)と、
無効の人(30%)があらかじめ判別できよ
うになります。プランルカストのドライシ
ロップが1歳以上で使用可能となりました
ので、乳幼児喘息の予後が格段によくなる
はずです。
3)徐放性テオフィリン
血中濃度が5〜15μg/mlで気管支拡張作用を発揮しますが、最近、気管支拡張作用を発揮する濃度より低濃度で抗アレルギー炎症作用が期待できることがわかってきました。
4)DSCG + β
ネブライザーを購入し、定期吸入(2回 / 日)をします。この治療法が開発されてから乳幼児の重症喘息のコントロールが格段に進歩しました。そのため、入院患者がいなくなった病院もたくさんあります。
5)ステロイド吸入
ベクロメサゾンからフルチカゾンが使用可能となり、副作用は少なく、より強力に治療できるようになりました。
小児気管支喘息管理・治療ガイドライン2000では、個々の重症度に応じて、これらをいくつか組み合わせるステップアップ方式が推奨されていますが、より強力な治療から開始し、コントロールができればステップダウンする方法も勿論可能です。中等症以上では、小児でもリモデリングが起こってきますから、楽観的評価は禁物です。中等症以上では、フローボリュームカーブが下に凹まないよう(リモデリングが起こらないように)治療を継続することが必要です。
1〜2年のうちに日本でも使用可能見込みの薬剤
1)長期作動型吸入β刺激剤(salmeterol)
2)FP + 長期作動型β刺激剤(salmeterol)
3)Budesonide 吸入液
乳幼児のネブライザー吸入が可能となるため、特に乳幼児の
喘息コントロールと予後改善が大いに期待されます。
薬物療法以前に、アレルゲン対策(ハウスダスト・ダニ、ペット、カビなど)が、特に小児では、重要なのは言うまでもありません。以上のような治療をすれば、小児の気管支喘息は95%以上コントロール可能です。しかし、それでもコントロールができない場合は、治療見直し、喘息教室、喘息日記・ピークフローメーター、吸入手技・器具の点検、カウンセリング、家庭訪問という手段により、もう少し予後をアップさせる方法がありますが、非常に大きなエネルギーを覚悟せねばなりません。
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