外観

特長

人工関節センターは、高齢化に伴い増加傾向のある変形性関節症やリウマチ性疾患などが原因で各関節の機能障害や痛みでお困りの患者さんが早期に日常生活に復帰できるように、膝関節や股関節をはじめ、肘関節、足関節、指趾関節を専門的に診断・治療するための診療部門です。

股関節の病気と治療そして人工股関節置換術

おしりや太もも、膝にこわばりや痛みを感じる、長時間の歩行や運動後などに時々痛むなど、股関節痛にお悩みの方へ  

股関節とは

股関節は脚の付け根にある関節で、胴体と脚の間にあります。
ここでは、大腿骨の丸い部分(大腿骨頭)が骨盤の受け皿の部分(臼蓋)にはまり込んでいます。 関節部分の骨の表面は軟骨でおおわれ、股関節にかかる力を吸収するとともに大腿骨頭と臼蓋の動きをスムーズにしています。股関節は、人が立ったり歩いたりするときに体重を支える役割をにない、歩行時には体重のおよそ3倍、立ち上がりでは体重の数倍の重さがかかるといわれています。そして、時にはその軟骨がすり減り、やがて大腿骨頭と臼蓋の骨と骨が直接こすれて骨が変形してくると痛みを感じたりこわばりを生じたりします。一般的な原因には変形性股関節症、関節リウマチ、大腿骨頭壊死症があります。また、転倒などによる骨折も歩行が困難となる原因のひとつです。


 

変形性股関節症

股関節が痛くなる代表的な病気で、子供の頃の先天性股関節脱臼の後遺症や、股関節が浅い臼蓋形成不全などが原因となることが多いですが、加齢により股関節の軟骨がすり減ってしまうことが原因になることもあります。症状としては、歩行時などに脚の付け根(股関節)が痛み、股関節の動きが制限されるようになります。痛みが強い場合は、人工股関節置換術や骨切り術を行うことがあります。
 

関節リウマチ

身体の多くの関節が痛くなり、変形する病気です。
股関節もおかされることがあり、関節内の軟骨や骨が破壊されて関節の運動障害・変形が進行し日常生活に支障をきたすようになります。痛みが強い場合は、人工股関節置換術を行うことがあります。

大腿骨頭壊死症

大腿骨の骨頭部分の血流が悪くなり、骨の細胞が死んでしまう(壊死)病気です。
アルコールの多飲やステロイド剤の使用も関係しているといわれています。骨が栄養不良になってつぶれている部分が広範囲な場合には、人工股関節置換術や骨切り術を行うことがあります。

骨折

転倒などによって大腿骨頭の下の細い部分(大腿骨頚部)で骨折し、骨をつなげることが難しい場合は人工関節に入れ換えることがあります。

股関節の治療

■保存的治療法
運動療法 筋力強化、ストレッチ、ウォーキング、水中運動、肥満解消など
薬物療法 消炎鎮痛薬(内用・坐薬)、注射など
装具療法 補高靴、杖など
■手術的治療法
骨切り術 骨盤や大腿骨の一部を骨切りして骨の形を整えます
人工股関節置換術 軟骨と傷んだ骨を取り除いて人工関節に置き換えます
 

人工股関節置換術とは

人工股関節置換術は変形した骨を切除して人工の関節に置き換える手術です。
人工股関節はカップ(骨盤側の受け皿)、ボール、ステム(大腿骨側の固定部分)からできていて、股関節の痛みを軽減する効果があります。骨への固定はセメントを用いる方法と用いない方法があり、骨の状態に応じて使い分けています。摺動部分には摩耗に対して有利であるセラミックを用い、長期間の使用に耐えられるようにと考えています。
しかし、長期間の使用による摩耗などの原因によって人工股関節がゆるんでくる場合があります。そのような時には人工股関節の入れ替え手術(再置換術)が必要となります。本院では他院で手術された患者さんも含めて再置換術の治療も行っています。

低侵襲手術(MIS: Minimally Invasive Surgery)と前方アプローチ(DAA: Direct Anterior Approach)

本院では従来に比べて小さな皮膚切開で手術を行う低侵襲手術法(MIS)を行っています。
この手術法では単に皮膚切開が小さいだけではなく、腱や筋肉の切開も少なくすることができます。したがって、手術後の回復も早く、早期からリハビリテーションを行うことができます。術後2日目から車いすに乗る練習が始まり、続いて歩行練習に移ります。当院ではリハビリテーションを行う病棟がありますので、退院後の日常生活や仕事が心配なく行えるよう術後3週間のリハビリテーションプログラムを組んでいます。

また、著明な変形がなければMISの中でも特に筋肉や腱を切らないで手術が行える前方アプローチ(DAA)を用いて手術を行っています。DAAでは術後疼痛が少ない、手術した脚でふんばりやすいなどのリハビリテーション的なメリットの他に、脱臼しにくいというメリットもあります。



 

手術用ナビゲーションシステム

人工股関節置換術では正常股関節の動きを再現することを大きな目標としています。
そのためにはインプラントを正確に設置することが不可欠になります。本院では2004年から手術用ナビゲーションシステムの使用を始めました。
このシステムは手術中にインプラントの設置角度や脚延長量などをコンピュータが計算し、手術がより正確に行われるように情報を表示するもので、安全で信頼性の高い支援システムです。患者個別の骨盤、股関節の解剖学的形態を登録し、これらに基づいてインプラントの設置位置や角度、脚延長量が表示され、これらを参考にして手術を行うことができます。我々は、特に我が国に多い臼蓋形成不全に伴う変形性股関節症に対応するナビゲーションシステムをドイツのビーブラウン社と共同で開発し、2009年に完成しました。その後2019年までにおよそ650例に使用してきています。


 

脱臼に対する対策:Dual Mobility Cup

人工股関節置換術において脱臼は大きなトラブルのうちの一つです。
脱臼に対する対策としては手術法の工夫、的確なインプラントの設置、患者さんへの生活指導などが行われています。
本院ではさらに脱臼しにくい構造を持ったインプラントを使用することによって、より安全な人工股関節を目指しています。
Dual Mobility Cupは1977年にフランスで開発されたシステムで大きい摺動部と小さい摺動部を持つことによって可動域が大きくなり、脱臼しにくくなっています。本院では2014年から主として脱臼のリスクが高いと考えられる患者さんに使用しています。

  
 

再置換術:金属補填材の使用

残念ながら、ゆるんでしまった人工股関節には再置換術が必要です。
再置換術はゆるんだインプラントを抜去し、骨欠損を生じていれば再建を行ってから新しいインプラントを設置します。骨欠損部の補填には自家骨移植、同種骨移植の他に金属補填材を用いることができます。われわれは症例に応じて強度が保証されており感染のリスクがない金属補填材を用いた再置換術を行っています。
 


 

インプラント周囲骨折

人工関節置換術後に大腿骨骨折を受傷することがあります。
この場合、通常の大腿骨骨折と違い、インプラントが入っていますので骨接合を行う場合には特殊な金属プレートが必要となったり、インプラントの再置換術が必要になったりします。骨折の部位、ステムのゆるみの有無によって治療法が選択されます。
本院では2006年から2019年までで38例の治療を行い、うち26例は骨接合術で、12例は再置換術で治療を行いました。
 

人工股関節置換術後感染の治療

人工股関節置換術後に感染症を合併することがあります。
手術後間もなくに発症する場合と何年もしてから発症する場合があります。何年もしてから発症する場合は身体の他の部位の感染症(例えば肺炎や膀胱炎など)から血行性に細菌が波及して発生しますので、身体に感染症が発生すれば早期に治療しておくことが予防として大切です。
人工股関節置換術後に感染を合併した場合の治療は困難と考えられています。本院ではまず感染したインプラントを抜去して感染の鎮静化を図り、その後感染の鎮静化を確認してから新しいインプラントで再置換術を行っています。2004年から49例の術後感染の治療を行いました。うち37例をこの方法で治療を行いましたところ、35例で感染の鎮静化が得られて再置換術が行われました。残りの2例では再置換術後に感染が再燃しましたが、もう一度同じ治療を繰り返すことによって感染は鎮静化して再置換術が行えました。
 

患者さんへのワンポイント

■人工股関節置換術後感染の予防のために
糖尿病、リウマチなどは感染のリスクを高めます。このような合併症をお持ちの方は十分な治療を受けておいて下さい。感冒、膀胱炎などから細菌が血液に乗って人工関節部にやってくることがあります。股関節以外でも感染が起これば、早期に治療を受けましょう。
■人工股関節置換術後感染の症状
股関節部の痛み、発熱が生じます。安静時にも痛みがあるときには感染の可能性がありますので、早期に受診して下さい。適切な治療を受ければたいていの場合、感染を沈静化して再置換が可能ですので、どうかなと思ったときには早い目に受診に来て下さい。
 

10年以上の長期成績

 当科では2004年からセメントを使用しないBiCONTACT人工股関節を使用し、セメントを使用する人工股関節として2006年からCMK、2009年からTrillianceを使用し、現在もこの3種類の使い分けがベストと考えて使用し続けています。この間、手術方法としてより侵襲の少ない前方アプローチ法の導入、より正確なインプラントの設置のためのナビゲーションシステムの使用、手術後の疼痛軽減のための神経ブロックの併用、早期リハビリテーション開始など安全で確実な手術を目指して治療を行ってきました。
 ただ、最も重要なのは臨床成績であり、手術後10年以上経過観察できた症例の成績をまとめました。表にそれぞれの人工股関節について、手術後10年以上経過観察できた症例数、手術時平均年齢、平均経過観察期間を示します。10年生存率としていかなる原因によっても再置換術を必要とせず使用し続けられている症例の割合は、それぞれ99.4%、100%、100%と非常に良好な成績でした。
 インプラントの使い分けは患者さんの年齢、活動性、骨の状態などによって判断しています。いずれのインプラントも良好な長期成績が期待できますので、手術を受けられる際には担当医から説明をお聞きください。
 
  BiCONTACT Trilliance CMK
使用開始 2004年      2009年           2006年     
症例数 166股135例      95股78例           90股74例     
手術時平均年齢      54.6歳(21~70)           60.7歳(32~76)      69.3歳(46~84)
平均経過観察時間      14.0年(10.2~17.7)          11.8年(10.0~13.9)           12.7年(10.0~15.6)     
10年生存率      99.4% 100% 100%

膝関節の病気と治療そして人工膝関節置換術


朝起きた時や動き始めに膝がこわばる、膝が動きにくくなる、立ち上がる時や階段を下りる時に痛むなど、膝関節痛にお悩みの方へ。
 

ロコモティブシンドローム

骨や関節、筋肉、神経などが衰えて「立つ」「歩く」といった動作が困難になり、要介護や寝たきりになってしまうというロコモティブシンドローム(運動器症候群)が近年、問題となっています。高齢化社会の中で注意すべき国民病といっても良いでしょう。原因としてはバランス能力の低下、骨粗鬆症や変形性関節症などの骨関節の疾患が挙げられ、ロコモティブシンドロームの患者とその予備軍は全国に4700万人いると推測されています。また、要支援・要介護となった原因疾患を調べてみると脳血管疾患、認知症、衰弱についで関節疾患、骨折となっています。自立生活が不能となる原因の約1/5は関節疾患であり、とくに膝関節疾患の割合が高くなっています。実際、膝関節痛を主訴に受診される患者様は毎年増加傾向にあります。

                 
                      「人工関節ライフ」http://kansetsu-life.com/より

 

膝関節

膝関節は、大腿骨(太ももの骨)、脛骨(すねの骨)、膝蓋骨(お皿)の3つの骨から構成されています。
人体の中で最も大きな関節で、日常生活の動作(立ち座り、歩行、階段昇降など)に重要な役割を持っています。大腿骨と脛骨および膝蓋骨の表面は、弾力性のある滑らかな軟骨でおおわれており、関節を動かした時や体重がかかった時の衝撃を緩和するクッションの役割を果たしています。ところが、年齢を重ねるにつれてその軟骨がすり減り、体重がかかるたびに軟骨の下の骨同士がぶつかるようになると、関節に痛みを生じたり、こわばったりするようになります。 中高年の膝関節疾患には変形性膝関節症が最も多く、他に関節リウマチ、大腿骨顆部壊死などがあります。変形性膝関節症の症状は、初期には膝のこわばり感や、歩き始め、階段の昇降、長時間の歩行、立ち仕事のあとなどに痛みが起こります。初期でも炎症が強い時期には関節内に関節液がたまり、膝を曲げたときに強い痛みを伴うことがあります。変形が進行するにつれて動きが制限され、正座や膝を完全に伸ばすことができなくなり、痛みや歩行障害も加わって徐々に日常生活が制限されてきます。また、O脚やX脚といった変形が進行することがあります。

変形性膝関節症

膝関節の軟骨がすり減り、関節炎や変形を生じて痛みなどが起こる病気です。
比較的、中高年の女性の発症率が高く、国内では約1000万人もの方が変形性膝関節症に悩まされていると言われています。発病初期は痛みがあってもすぐに治まることも多く、年のせいだとあきらめて病院を訪れる人が少ないのが現状です。一度損傷した軟骨は回復するのが難しいため、痛みが徐々に増加する傾向にあります。レントゲン検査にて診断が容易であり、多くの場合は膝関節の内側部分の関節軟骨からすり減っていき、やがては骨破壊が生じてきます。内側の骨破壊が進行すると内反変形(いわゆるO脚変形)となっていきます。変形性膝関節症の正しい知識を身に付け、適切な治療を受けることが大切です。


 
変形性膝関節症の主な症状
  • 朝起きた時や動き始めに膝が「こわばる」、膝が動きにくくなる
  • 立ち上がった時や階段を下りる時に痛む
  • 正座する時に痛む
  • 痛みが続き、膝に腫れや熱感がある
  • 膝に水(関節液)がたまる
 

関節リウマチ

免疫反応の異常により、全身の関節が炎症(滑膜炎)を起こす病気で膠原病の一つです。
朝に手や指がこわばって動かしにくいのが症状の特徴です。また、関節が腫れたり、水(関節液)がたまったりします。進行すれば関節の骨が破壊されることもあります。症状が進行すると、歩行できないほどの痛みを伴う場合があります。
関節リウマチの主な症状
  • 小さな関節から、全身の大きな関節へと進行する
  • 関節が腫れる
  • 関節液がたまる
  • 関節の骨が破壊されることもある
 

大腿骨顆部壊死

多くが原因を特定できない疾患で、50~60歳代の中高年に多く、強い疼痛で安静時の痛みと関節の腫れを生じることが多いです。
よく膝関節に水がたまって、抜いてもすぐ腫れる場合はレントゲンで異常が見られなくても、MRI検査でこの疾患がわかる場合があります。歩行できないほどの痛みを伴うこともあります。夜間時に疼痛があるのが特徴です。


《大腿骨顆部壊死の主な症状》
  • 膝関節が腫れて水を抜いてもすぐ腫れてくる
  • 夜間も動かさなくても痛い
  • 初期にはレントゲンでは分からず、進行とともに骨がつぶれて変形していく
 

半月板損傷、靭帯損傷

半月板は、膝関節でクッションのような役割を果たしており、スポーツ等で体重が加わった状態で捻ったりすることで、衝撃によって半月板損傷を引き起こすことが多いです。高齢者の場合は、捻挫や打撲などで損傷することもあります。 靭帯は、関節の骨と骨をつなぎ、安定させる役割がありますが、靭帯に大きな外力が加わると部分的もしくは完全に断裂してしまうことがあります。これを靭帯損傷といいます。
半月板損傷の主な症状
  • 膝に痛みやひっかかりを感じる
  • 関節液がたまることもある
靭帯損傷の主な症状
  • 関節が不安定になる
  • 進行すると変形性関節症になることもある
 

膝関節の治療

治療については、手術をしないで治す方法(保存療法)と手術療法があります。
保存療法には体重のコントロール、大腿四頭筋訓練などのリハビリ、膝サポーターなどの装具、消炎鎮痛剤の内服、ヒアルロン酸の関節腔内注射などがあります。この中で最も効果が証明されているのは体重のコントロールです。2-3kgの減量で十分除痛効果が得られます。また、最近グルコサミン・コンドロイチンなどのサプリメントの効果についてよく相談を受けますが、科学的なデータとしての有効性は今のところ認められておらず、あまりお勧めできるものではありませんので、利用には注意が必要です。

手術療法については関節鏡手術、高位脛骨骨切り手術、人工関節手術があります。
関節鏡手術は損傷した半月板や滑膜を切除します。高位脛骨骨切り術は下肢のアライメントを骨切りにて矯正する方法です。
人工関節手術は、損傷した関節軟骨、骨を人工膝関節の形に合わせて薄く削り、金属、セラミック、ポリエチレンでできた人工関節を大腿骨および脛骨にしっかりと固定する手術です。
■保存的治療法
体重コントロール
運動療法 大腿四頭筋の等尺性運動、水中運動、ストレッチなど
薬物療法 消炎鎮痛薬、ヒアルロン酸・ステロイドの関節内注射など
装具療法 足底板、サポーター、杖など
温熱療法 電気・超音波器具、保温目的のサポーターなど
■手術的治療法
関節鏡手術 関節鏡で見ながら、傷ついた関節軟骨や半月板を切除
高位脛骨骨切り術 脛骨の近位部を骨切りし、下肢アライメントを矯正
人工膝関節置換術 軟骨と傷んだ骨の表面を切除して人工関節に置き換える
膝関節の痛みの原因であるすり減った軟骨と傷んだ骨を取り除いて、金属やプラスチックでできた人工関節に置き換える手術です。
 

人工膝関節置換術とは

膝関節の痛みの原因である損傷した関節軟骨、骨を人工膝関節の形に合わせて薄く削り取り、人工関節コンポーネントを大腿骨および脛骨に固定して置き換える手術です。
大腿骨コンポーネントは金属もしくはセラミック、脛骨コンポーネントは金属でできていますが、軟骨の代わりとなるベアリングはポリエチレンでできています。O脚に変形した膝関節を、人工膝関節置換術によって出来るだけまっすぐになる様に矯正します。痛みの原因となるすり減った軟骨と傷んだ骨が人工物に置き換えられて痛みがなくなることで、日常の動作が楽になることが期待できます。耐用年数については20年くらい持続すると考えられています。約30年の歴史があり日本全国での手術件数もここ10年間で倍増しており年間80000例以上にものぼります。手術治療の中で最も痛みをとる効果が高く、また変形の矯正が行え、成績の安定した手術です。




 

当院での人工膝関節置換術の特長

当院においては人工膝関節手術を専門的に行っており、年間150例以上の患者様がこの人工膝関節置換術を受けています。
入院期間は3-4週間程度です。当施設でのこの手術の特長としては、最近、学会などでトピックスとなっているポータブルナビゲーションの使用や術後疼痛のコントロールのための関節周囲多剤カクテル療法などを取り入れており高い患者満足度を獲得しています。
  • ポータブルナビゲーションによる正確なインプラントの設定
  • 術後疼痛対策:関節周囲多剤カクテル注射の併用
  • 出血対策:トラネキサム酸の使用により自己血輸血は不要
  • 耐摩耗性の向上:比較的若い患者様にはセラミック製のコンポーネントを使用
  • 術後腫脹対策:アイシングマシーンによる冷却療法
  • 創部:吸収糸による縫合で抜糸が不要
 

ポータブルナビゲーションシステム

ジンマー・バイオメット社の「KneeAlign2」は、手術時に大腿骨に取り付け、上下左右に動かすだけという簡易な作業で、内蔵の高感度IMU(慣性計測装置)が骨の軸を把握し骨を切る最適な角度を割り出す、小型でシンプルな人工膝関節置換術用ナビゲーションシステムです。追加のX線画像、MRI画像、CT画像が不要です。従来品の大型ナビゲーション(CAS)のように外部機器と接続することなく、手術中に豊富なデータがこの手のひらサイズの機器から得られます。従来のナビゲーションと同等の精度のシステムが小型化され、術者にとっての利便性も向上できます。当施設でのこのナビゲーションの精度については国内外の学会や論文などで報告させていただいております。
 
 

人工関節術後の注意点

人工膝関節の耐久性については、10年間ゆるみがなく日常生活が過ごせる可能性が95%以上あり、長期に安定した手術法です。
ゆるみが生じる原因に関しては様々な調査がなされておりますが、もっとも関係する原因は体重であることがわかっています。変形性膝関節症の原因にも肥満が大きく関係しますが、術後においても重要です。肥満の方は術後にも減量を心がけることが大事です。

人工膝関節置換術に伴う合併症はいずれも頻度の低いものですが、術後の感染は最も注意のいる合併症です。
術後早期に生じる場合と何年も経ってから生じる場合があります。人工関節周囲がいったん感染を起こしてしまうと治りにくいため手術による治療(洗浄掻爬術や人工関節抜去術など)が必要となります。当院では感染予防策として、手術室はクリーンルームを使用し、術者も滅菌した頭巾を着用して術者から細菌が入らないようにしています。また予防的な抗生物質の全身投与を行っており、感染の可能性は1%以下となっております。またこのほかの合併症として深部静脈血栓症があります。静脈内に血栓ができそれが肺の血管につまることで生じるのが、飛行機で長時間座ることで生じるエコノミークラス症候群(肺梗塞症)ということになります。症候性の肺塞栓症が生じることは非常にまれですが、予防としては出来るだけ早くから動く(筋肉を使う)ことが一番重要です。当院ではさらに抗凝固剤を内服することで血栓症を予防します。

術後のリハビリは、当院ではリハビリテーション部と協力してしっかりとしたメニューで取り組んでいます。
術後2日目に歩行練習を開始し、ほとんどの方は術後3~4週間で一本杖歩行が可能になり退院できます。



 

質の高い包括的な医療

いまや人工関節手術は膝関節、股関節を合わせて日本全国で年間約16万件以上も行われており決してめずらしい手術ではありません。
当センターでは人工関節学会認定医およびリウマチ専門医を中心に診療を担当しており、人工関節手術やその看護およびリハビリテーションに関して、最新の知識や技術を取り入れ、個々の患者さまのライフスタイルや家族背景にあったより安全で質の高い包括的な医療を提供することを目指しています。
人工関節学会認定医による手術
当院整形外科では年間1000例を超える手術(全身麻酔)を行っており、そのうちの300例以上は人工股関節手術と人工膝関節手術で占めています。
よりよい人工関節手術を目指して、早くからセラミック製の耐用性のある人工関節材料の使用や、最小侵襲手術、ナビゲーションの使用など安全で体への負担の少ない手術方法を採用しています。また、人工股関節、人工膝関節以外にも、人工肘関節置換術、人工足関節置換術、人工指趾関節置換術などの手術も行っております。さらに、両側同時手術も行っており、入院日数や費用など患者さまの負担をできる限り軽減できるように努めています。

多種のメディカルスタッフ
治療効果を向上するには、手術自体を的確に施行することだけでなく、周術期の全身管理や早期のリハビリテーションが不可欠となります。
周術期の看護やリハビリテーションについては専門的な看護師や理学療法士、作業療法士などのスタッフが術前より介入することにより早期の機能回復および術後合併症の予防が実現できています。自宅に退院できない場合などの転院調整や生活支援についてはソーシャルワーカー(Medical Social Worker:MSW)が対応しています。また、栄養士や薬剤師も入院から退院まで人工関節の治療をサポートします。
総合病院としてのチーム医療
当センターは単独の人工関節センターとは異なり総合病院であり、重度の合併症を有する症例に対しても対応することができます。
循環器内科、糖尿病内分泌内科、腎臓内科、神経内科などの他科との迅速な連携によっていかなる疾患に対しても専門的な治療が可能であり安心、安全に手術を受けていただけるのが特徴です。
術後サポート
さらに所属する整形外科医師13名全員で診療をサポートしていますので、どのような時にも対応可能な診療体制をとっています。
また、術後合併症である人工関節のゆるみや感染、人工関節周囲骨折などに対しても経験豊富な医師が対応して再置換術や骨接合術など個々に合わせた治療法を計画し、安心して退院していただけるようにしています。

主な業績(関節外科)

■講演
大橋弘嗣 股関節の機能解剖 第49回日本人工関節学会 2019
大橋弘嗣 人工股関節置換術をより安全に行うために 梶ヶ谷リウマチ・腎症骨症カンファレンス 2018
大橋弘嗣 大腿骨頚部骨折に対するTHAの適応 
-Dual mobility cupによって適応は広がるか-
第91回日本整形外科学会学術総会 2017
大橋弘嗣 前方アプローチTHAにおけるコツとpit fall 第13回西湘整形外科セミナー 2017
大橋弘嗣 人工股関節置換術後感染の対策と治療 平成28年度JCOA研修会 2017
渭川徹秀 TKAナビゲーションシステムと血栓予防について Osaka City整形外科フォーラム 2017

■海外発表
Ohashi H, Yo H, Ikawa T,
et al.
THA after previous hip preservation surgeries
/Vreden’s Readings 2019 (St. Petersburg)
2019
Yo H, Ohashi H, Kose Y Target cup angle to get good range of motion following total hip arthroplasty
/AFJO 15th Congress (Lyon)
2019
Ohashi H, Yo H, Ikawa T,
et al.
Acetabular reconstruction with porous metal augments for primary and revision THA
/AFJO 15th Congress (Lyon)
2019
Yo H, Ohashi H, Ikawa T,
et al.
Evaluation of accuracy and a learning curve of accelerometer-based computer navigation in total knee arthroplasty
/EORS 2018 (Galway)
2018
Yo H, Ohashi H, Ikawa T,
et al.
Comparison of Different Dosage of Tramadol Hydrochloride/cetaminophen Combination and non-Steroidal Anti-Inflammatory Drug for the Treatment of Pain following Total Knee Arthroplasty
/World Arthroplasty Congress 2018 (Rome)
2018
Inori F, Ohashi H Pyoderma gangrenosum after bilateral TKA
/19th EFFORT congress (Barcelona)
2018
Ohashi H, Yo H, Ikawa T,
et al.
Pain management after THA
/2017 ICJR Japan Hip & Knee (Tokyo)
2017

■国内発表
南義人、大橋弘嗣、渭川徹秀 Imageless navigationを使用したTHAの脚延長量とオフセット変化量の精度検証
/第50回日本人工関節学会
2020
上野健太郎、大橋弘嗣、楊裕健
渭川徹秀
大腿骨近位部骨折後症例に対するTHAの臨床経過
/第50回日本人工関節学会
2020
楊裕健、大橋弘嗣、渭川徹秀 THA術後疼痛の局在性とその原因について
/第50回日本人工関節学会
2020
白川裕一朗、渭川徹秀、楊裕健
大橋弘嗣
Dual Mobility Cupを使用した人工股関節全置換術の短期成績
/第50回日本人工関節学会
2020
臼井俊方、大橋弘嗣、楊裕健
渭川徹秀
大腿骨頚部骨折に対するTrilliance stemの短期成績
~line-to-lineセメント手技の有用性~
/第50回日本人工関節学会
2020
大橋弘嗣、楊裕健、渭川徹秀 Metal augmentを使用した臼蓋再建/第50回日本人工関節学会 2020
渭川徹秀、上野健太郎、寺岡貴徳
楊裕健
タニケット非使用での人工膝関節全置換術(TKA)における出血量、疼痛、
腫脹は減らせるか
/第12回日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会
2020
渭川徹秀、楊裕健、大橋弘嗣 トラネキサム酸を用いたタニケット非使用の人工膝関節全置換術は総出血量を
減少させるか?
/第50回日本人工関節学会
2020
楊裕健、大橋弘嗣、渭川徹秀他 臼蓋骨欠損に対してtitanium augmentを用いたrevision THAの中期成績
/第46回日本股関節学会
2019
竹内弘之、南義人、上野健太郎
Klippele-Trenanay-Weber症候群患者に対して人工膝関節置換術を施行した1例
/第133回中部日本整形外科災害外科学会学術集会
2019
渭川徹秀、寺岡貴徳、楊裕健 Modified gap法で施行したCS型人工膝関節置換術におけるインプラント
ギャップと短期での臨床成績について
/第11回日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会
2019
津本柊子、大橋弘嗣、楊裕健
Lyon Hipを用いた人工骨頭置換術の短期成績
/第132回中部日本整形外科災害外科学会・学術集会
2019
吉村仁志、大橋弘嗣、上野健太郎
Cementless BICONTACT stemを使用したTHAの骨反応と中期成績
/第132回中部日本整形外科災害外科学会・学術集会
2019
渭川徹秀、楊裕健、寺岡貴徳
人工股関節置換術中に計測した脚延長量と引き離し距離についての検討
/第49回日本人工関節学会
2019
  • 上野健太郎、大橋弘嗣、楊裕健
ナビゲーションTHAにおける手術操作毎の所要時間とその影響因子についての
検討
/第49回日本人工関節学会
2019
  • 南義人、大橋弘嗣、楊裕健
Imageless navigationを使用したTHAのcup設置の精度検証
/第49回日本人工関節学会
2019
臼井俊方、大橋弘嗣、楊裕健
Trilliance stemを用いた人工股関節手術の中・長期成績
/第49回日本人工関節学会

2019

金子博徳、大橋弘嗣、木下浩一
E1ライナーを用いたTHA後摩耗計測
~金属骨頭とCeramic骨頭の前向き無作為化多施設共同研究第4報~
/第49回日本人工関節学会
2019
楊裕健、大橋弘嗣、渭川徹秀
Dual mobility cupを用いたTHAの短期成績
/第45回日本股関節学会学術集会
2019
楊裕健、大橋弘嗣、渭川徹秀 THA術後疼痛と画像評価、満足度評価の関連性について。
/第43回日本股関節学会学術集会2016
2018
吉村仁志、臼井俊方、南義人
THA術後10年でセラミックライナーが破損し、再置換術を行った一例
/第131回中部日本整形外科災害外科学会学術集会
2018
渭川徹秀、寺岡貴徳、楊裕健 CS型TKAにおけるMid-flexion instabilityの有無が臨床成績に及ぼす影響
/第10回日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会

2018

大橋弘嗣、楊裕健、渭川徹秀
ナビゲーションシステムを用いたTHA術中骨盤移動計測
/第12回日本CAOS研究会

2018

大橋弘嗣 THAにおけるImage-less navigationの精度と応用性
/第12回日本CAOS研究会

2018

楊裕健、大橋弘嗣、渭川徹秀
THA術後疼痛、患者満足度への脚長、オフセット変化の影響
/第48回日本人工関節学会

2018

南義人、渭川徹秀、楊裕健
THA、BHA後に腸腰筋インピンジメントを認めた症例
/第48回日本人工関節学会

2018

内山勝文、大橋弘嗣、木下浩一
二次性変形性股関節症に対するE1ライナーを用いたTHA後の摩耗計測
ー金属とセラミック骨頭の前向き無作為化他施設共同研究3報ー
/第48回日本人工関節学会
2018
渭川徹秀、南義人、寺岡貴徳
Modified gap法で施行したCS型TKAにおいてmid-flexion instabilityが
臨床成績に与える影響
/第48回日本人工関節学会
2018
楊裕健、大橋弘嗣、渭川徹秀 THA術後可動域に影響を与える因子について/第44回日本股関節学会学術集会 2017
渭川徹秀、竹村進、寺岡貴徳 Modified gap法で施行したCS型TKAにおけるデジタルセンサー(DynAccurate)を
用いたGap計測
/第9回日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会
2017
岡島良明、羅建華、上野健太郎 TKA術後出血対策におけるトラネキサム酸関節内注入の至適用量は1gである
/第90回日本整形外科学会学術総会
2017
渭川徹秀、竹村進、寺岡貴徳
デジタルセンサーを用いてmodified gap法で施行したCS型TKAにおける
各可動域でのインプラントgap計測
/第47回日本人工関節学会
2017
楊裕健、大橋弘嗣、渭川徹秀
当科における大腿骨ステム周囲骨折の治療経験
/第47回日本人工関節学会
2017
木下浩一、大橋弘嗣、金子博徳
二次性変形性股関節症に対するE1ライナーを用いたTHA後の摩耗計測
-金属骨頭とセラミック骨頭の前向き無作為化他施設共同研究2報- 
/第47回日本人工関節学会
2017

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